●2000年1月24日 発表●

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(一、この星の次の世紀へ何語り継ぐ)
ブルーベリーの青さまぶしい朝の食卓
松浜夢香(北海道)
(一、生い立ちて心に生きるこのふるさとは)
柿の実のしずかに熟るる甲斐の国はら
山本栄子(山梨県)
(二、山国のひとより届く絵葉書を見て)
なぜかくも生き急ぎしかふとわれに問ふ
寺田冴夕水(神奈川県)
(二、山国のひとより届く絵葉書を見て)
はろばろと山の背わたる風の音を聞く
高野英子(アメリカ)
一、生い立ちて心に生きるこのふるさとは
山にゐて山に抱かるる山繭無口 山本とし子(山梨県)
夏の日の釜無川の白き砂原 金子信吉(山梨県)
紙ヒコーキ時を翔びきて今も空ゆく 茨木早苗(京都府)
三輪車小さい私風の子みたい 中村仁美(東京都)
二、山国のひとより届く絵葉書を見て
ふと気づく辺りの木々の真っ赤な紅葉 岩井未希(山梨県)
三、この星の次の世紀へ何語り継ぐ
心せよプロメテウスの火をわれら持つ 天野 翔(神奈川県)
夏ならば大河のなまず小川のほたる 天辰芳徳(石川県)
一、生い立ちて心に生きるこのふるさとは
帰り来よ春の山よぶ秋山がよぶ 望月はじめ(山梨県)
神代より歌人在ます甲斐の国原 駒井葉末(東京都)
手のひらにのせて溢ふるるちちははの愛 早坂節子(東京都)
大好きなあの大空が見ていてくれる 藤原佳奈子(秋田県)
いつまでも星降る夜空続けと願う 古堅尚子(沖縄県)
休耕田にコスモス咲かせ花あかりする 牧野初惠(秋田県)
二、山国のひとより届く絵葉書を見て
海に住む我も応えん貝殻添へて 鈴木 緑(神奈川県)
おじおばは皆老いてよい顔をしている 村井朋子(三重県)
湧き水の陽にきらめくを手に掬(すく)いたし 清水和子(東京都)
そのままのまだそのままの朱の烏瓜 樋口幸子(山梨県)
三、この星の次の世紀へ何語り継ぐ
あてもなく皿の油をぬぐいて洗う 吉田喜美子(広島県)
祖父が生き父が生き今君が在ること 遠藤博文(山梨県)
人間はとても愚かとでも愛しいと 合川友恵(千葉県)
一、生い立ちて心に生きるこのふるさとは
背を屈め土を見つめる父に重なり 直江早苗(埼玉県)
いつまでものこしていてねきれいな自然 寺田真里子(山梨県)
これからの私の未来支えてくれる 石原 瞳(山梨県)
目を閉じて色あざやかによみがえる日々 橘田千夏(山梨県)
草笛の手解き受けし兄すでになく 貝田日出男(大阪府)
夕波に鳰むつみあふ萬葉の国 小川 浩(大阪府)
人生の旅の空から見た蜃気楼 栗山稔康(神奈川県)
馬鈴薯の花に埋もれて悔ひなきところ 佐山昭雄(東京都)
いわし雲甲斐駒ケ岳父母の声 宮川逸雄(山梨県)
柿もみじ桜もみじのうつくしきころ 末安 緑(福岡県)
なんとなくただそこにあるそれだけでいい 薄井敦子(神奈川県)
からっ風桑原に鳴り父母を呼ぶ 千木良隆雄(群馬県)
砂山のくづるる音と沖ゆく白帆 杉本洋子(神奈川県)
聳え立つ富士の纏へる雲のいろいろ 渡辺勝子(山梨県)
古き代の火秉(ひとり)おきなの見えかくれして 野沢金雄(山梨県)
花びらをくぼみに溜むる城の石垣 坂内敦子(福島県)
み吉野の青き山河に鬼やんま舞ふ 平野理一(大阪府)
生国の阿波しのびつつこの地に踊る 有元洋剛(愛知県)
ほどほどに遠きにありて消ゆることなし 清水満洲雄(東京都)
祖父祖母の声にぎやかな日だまりの縁 竹原美奈子(東京都)
母の声あの子の笑顔野兎の耳 清水英郎(兵庫県)
稲穂垂る棚田の畔に彼岸花咲く 林田親利(福岡県)
縄文の泉湧きつぐ国のまほろば 矢島参郎(長野県)
凍てつきて鄙びし村に追羽根をつく 大久保厚子(山梨県)
春風に堆肥の匂ふ木造校舎 三好美樹(神奈川県)
地車(だんじり)の祭太鼓の今もとどろに 田中良吉(大阪府)
富士川の水引き寄せし父の投綱が 樋口修造(山梨県)
二、山国のひとより届く絵葉書を見て
字のにじみ雨か涙かふと思いやり 村上優子(東京都)
澄みし空かの地の人のやさしさ想う 佐藤政幸(北海道)
もろともに山もみぢ葉に紛るるやよし 高塚朋子(埼玉県)
幸いの住みかを覗く小窓とおもう 菊池博子(東京都)
ほんとうの幸せにつきふと考える 今道 悟(静岡県)
ヘリ舞ふよ内裏雛乗せ肩の小屋へと 服部真沙子(東京都)
たくましく生きる命の声が聴こえた 小野寺南美子(山梨県)
星の下泣いて語った夜もあったな 望月美佳(山梨県)
ゆるやかな時の流れにしばしひたれり 栗木知春(愛知県)
花咲かば告げんと言いし使いなりけり 林田親利(福岡県)
牛飼の目にいっぱいの熊笹の群 橘 茂夫(兵庫県)
木の脂の匂いに噎(むせ)ぶ夢を見るかな 伊集院洋介(東京都)
祭太鼓ひびく水田(みずた)に稲穂(いねほ)孕(ばら)むか 笠松正木(山梨県)
もういちどやりなおしたいなんて言わない 毎熊久美子(山口県)
さわらびのほろ苦きかもきみ捨てしこと 岡口茂子(福岡県)
おじいちゃん旅もいいけど健康第一 秋山智子(東京都)
ひとひらが心に重い“幸せですか” 山内まさこ(埼玉県)
目に浮かぶ木々のこもれび空よりおつる 新田彩乃(山梨県)
目を閉じて思い出すのは木々のざわめき 水上さゆり(山梨県)
青い空はなれていても二人をつなぐ 内藤憲実(山梨県)
涼しかろ居心地良かろ虫も多かろ 本木和彦(茨城県)
鳥雲に入りたる後の空の静けさ 露木まもる(東京都)
よみがえる山の湯宿のかなかなの声 増田茂子(山梨県)
黒々とはみ出しそうな文字に微笑む 高松和美(香川県)
つつましく生きる素直なこころ伝わる 高尾政彦(佐賀県)
いまもなほカタクリの咲く里を恋ふなり 伊藤靜江(山梨県)
墨に描く一人静の花のひと本 坂内敦子(福島県)
あヽさうだこんな景色がいつも胸内 中込成子(山梨県)
雪山を仰ぐ校歌が遠い記憶に 渡辺清子(山梨県)
目に浮かぶしんしん雪が深く降り積む 長坂祐芽子(青森県)
三、この星の次の世紀へ何語り継ぐ
国守ると戦に果てし学徒ありしと 伊藤浩子(岐阜県)
千羽鶴うずたかく積む少女の像よ 有永克司(埼玉県)
偉大なる自然の元に今があること 倉田恵実(山梨県)
人の良さ人のやさしさ時のいだいさ 志村丞吾(山梨県)
終日(ひねもす)を戦(そよ)ぎてやまぬ菜の花の海 野口博幸(熊本県)
街角のパントマイムの指先を見る 山口トモ子(茨城県)
ほつほつと富士登山の灯星へ連なる 勝間田康夫(静岡県)
目に見えぬ信頼と言う人の輪つくれ 中村定男(神奈川県)
センス・オブ・ワンダー永遠に子どもたちへと 太田隆司(東京都)
安らかに暮らせる星で在りつづくこと ななみ(東京都)
生まれくる生命はいつもかがやいている 小橋辰矢(岡山県)
宇宙より眺めしままに地球青かれ 菊池博子(東京都)
限りあるものをいとしむ人を育てん 明日香(京都府)
原爆の灰降りしことかってありしと 田村和郎(新潟県)
朱鷺が舞い棚田いきづく瑞穂の倭国 井上賢三(滋賀県)
かなしみと人の痛みを分つゆたかさ 川瀬玄忠(千葉県)
一輪の名も無き花を称ふる歌を 寺田冴夕水(神奈川県)
あきくさの乱れ咲くさま刺し繍(ぬ)うわざを 茂木カネ子(千葉県)
忘れない地球の蒼さ生命の重さ 西野智佳(東京都)
酒折連歌賞実行委員会