その八八


 




 







 























  夕焼けに 感光します 記憶のように  

20歳前ぐらいのキュートな
女の子ばっかりがでてくる
少し昔の映画を見ていた。

でもそんなに真剣ではなく
夜のさいごの家事のあれこれをしながら、
ところどころが掠れてゆく感じで
画面をちらっと見ていただけだったのに
それでもいつのまにか何の吸引力なのか
わからないけれど
気がつくともうブラウン管の前にぺたりと
座りこんでいた。

ボーイミーツガールな話でもあるけれど
なんだかガールミーツボーイと云った方が
気分が近いような気がしてくる。

向いの窓から、女の子たちの5人姉妹は
男の子たちに助けを求める。

時にはランプの灯りをかちかち点灯させて
サインを送るのだ。

父親や母親や家やそして自分までからも
解き放たれたくて、懸命に彼らにお知らせする。

ただそれだけのシーンを見た時
なんかかちっとじぶんにまでスイッチが
入った感じがしたのだ。

そして、彼らは閉じ込められた空間にいる
彼女達に今の思いの丈をレコードに託して
電話口で流す。するとそれを聞いた
女の子たち姉妹がその曲の問いかけを受けて
また違うレコードを探し出して
針を落とす。

受話器を耳に当てているとメロディーが
ふいに現われてたちまち追いかけてくる歌詞に
姉妹の女の子たちは、安堵したり、
つかのまこころが健やかに
なった表情をお互いの気持を瞬間、確認する。

こんなふうに思いを伝えあうシーンに
はじめて会った気がしてわたしは
その映画に惹かれていった。

ことばを確実に伝えることも大事だけれど
ことばをふくめたまわりのもやっとしたものまで
どうしても伝えたくなる時のもどかしさが
甦ってくるようで、気がついたときにははーんと、
やられてしまったあとだった。

女の子たちはさいごまで女の子のままで
生をみずからまっとう、完全燃焼してしまう。

すっごくずるいのだけれど。
すっごく正しいなぁと感じた。

たぶんじぶんが女の子の時代に
ちゃんとまっすぐに女の子を生きてこなかったことへの
多少の後悔とか喪失感みたいなものまでもが
呼び起こされてしまったせいかもしれない。

女性監督が描く女の子が女の子であるがゆえ
みずから女の子をみつけようとするそんな
痛すぎて愛しい物語。

映画を見て思いだすことの情報量そのものが
あぁじぶんなんだなぁと気づいて
少しだけ雑感を報告したくなっていました。
       
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