その一〇七

 

 

 






 






 




















  ピッチャーに 注がれるもの あふれています

近くのマンションで、古い水道管の
再生工事をしますので、御協力よろしく
お願いしますというびらが
ポストに入っていた。

古い水道管というものがどのようなもの
なのかあんまり想像はつかないのだけれど
ちょっと、さびさびのついたものを
頭に浮かべてみた。

時折聞こえる遠慮しぃしぃ立てている
工事の音がなんとなく好感が持てたりして
もっとダイナミックにその古いらしい
水道管をリニューアルしてくださいという
気持ちになる。

水は触っているだけで落ち着く。

手のひらですくっても指の隙間から
しみしみとこぼれてゆくだけで留まれなくて、
いつもリセットしつづけてるところが気分的に
重たくなくていいのかもしれない。

むかしスクール水着を着ていたころ
プールの中で友だちと水のかけあいっこを
していて夢中になりすぎて
いつまでも止められなかったことを思いだす。

たぶん、ふたりとも水の感触が心地よかったんだと
思う。水じゃない物質で同じことをしていたら
途端に不快感が芽生えそうなのに
水はなんていうかすべてを平らにしてくれる。

かなり冷えている2月の夕刻。
きゅきゅきゅっといま何処かのネジを
しめる音がした。

工事もそろそろ締めに入りつつあるのかもしれない。

あたらしい水道管からあたらしい水が
流れ落ちてくるところを頭に浮かべながら
再生工事の再生ってところにすこしばかり
なんのかんけいもないじぶんをゆだねてみたく
なったりしていた。
       
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