その一一三

 

 







 







 




















 

わらってる あいじょうだけが ありあまるとき 

腰から下を長く布で巻いたエプロンを
している異国のおじさんがベンチに座って
手ぶり身ぶりでなにかを喋ってる。

そのとなりにいるまんなかの銀髪っぽい
おじさんはその話しが面白くて
たまらないらしく、顔をゆがませて
笑いを堪えてる。

そしてそのとなりの右端のおじさんも
長いエプロンの膝のあたりで手を重ねながら
手ぶり身ぶりのおじさんを愛情たっぷりの
視線で微笑みながら見ている。

モノクロの写真はさんにんのおじさんが
映っていて、たったそれだけなのに
なんとなくそのページが好きで
ちらっと開いて見たくなる。

1とか2ではなくて3。
おばさんでなくておじさん。
そして
顔いっぱいの笑みは
ちょっとモノクロページをぬけだして
こっちまで伝わってきそうなくらい。

ときどき誰かといても大勢の人といても、
ふっとひとりになりたいなと
思うことがある。

あるのにわたしはかれらさんにんの
おじさんの写真にのこのことついてゆく。
そして
なんどもなんども雑誌のざらざらした
モノクロ写真を眺める。

もうかれらとはなんども逢っているはずなのに
もしかしたらわたしはその写真に映り込んだ
情報をなにか見逃してるかも知れないと
すみずみまでみる。

こないだもあったはずだけど
さっき見たときは、そのジェスチャーのおじさん
のすぐ隣に何も入っていない
白い買い物カゴが置いてあったのに気づいた。

たぶんプラスチック製で格子の形に編まれている。
なにを買ってもすけすけに中身がまるみえに
なるようなそんなバッグ。

あの長いエプロンといい買い物カゴといい
もしかしたらなにか御飯屋さんをしている
おじさんなのかもしれないと思った。

おじさんさんにんのとある日のいっしゅんが
その写真には刻まれていて
異国のわたしはそんなさんにんのおじさんたちの
おかげでいまいっしゅん温まってゆくのを
感じていました。

       
TOP