その一二五

 

 






 







 


















 

ことばじり どこにつなげば あかるくなるの

夜、もっと厚手のコート着てくるんだった
って思いながら、信号が青に変わるのを
待っているとき、すっごく逢いたいなぁと思う。

いまごろどこでなにしてるんだろうって。

なにかしてしあわせそうだったらそれだけで
いいのだけど。

木々が紅葉するスピードと共にその思いは
強くなる。

ぎゅっとだきしめたらあたたかい。
そっちの熱をこっちにすこしだけちょうだいって
感じで、わたしは彼の熱を奪うのだ。

という冬の恒例の帰宅の仕方をしていたのは
もう何年も前のこと。

黒い毛皮で身を包んだ黒猫はいつも私に
熱をおすそわけしながら
むりやり私に抱きしめられていた。

たぶん顔なんかもひしゃげてて
からだも十分、圧力いっぱいで
声にならない声で、むーとかぎゃーとか
一声ないて観念していた。

寒くなると人恋しくなる人がいるように
わたしは猫恋しくなって
ふいに本心とは裏腹にCFや雑誌のグラビアなどの
そこいらへんの猫をかわいいと思ってみたりする。
でも彼らはかりそめなのでまったくもって
わたしのぽっかりあいた穴は瞬間しか埋めてくれない
のだけれど。

時折、もういなくなってしまった人たちのことを
考える。
大好きになった人たちはみんなあっというまに
死んでしまった。
いちどだけここにはいない逢いたい人を
選んでいいですよって許しを
得ることができたら
わたしは愛した彼らではなくて、
あの黒猫を選ぶんだと思う。

ただいまって帰ってきてぎゅっとだきしめて
むぎゅっとないてくれたらその温もりだけで
あとちょっとは頑張れそうな気がするから。

       
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