その一五二

 

 




 







 






 

デラウェアは ひどく黙って たちまち溶けて

市役所の広報が光化学スモッグ発令の
宣伝カーのスピーカーからアナウンスが
途切れながら風に乗って聞こえてる。

こういう日に限ってからだの内側が熱くて、
風邪をひいてしまっていることに気づく。

毎年毎年夏風邪をひいてしまう。

発熱してると思いきり冷たいものが
欲しくて冷凍庫で凍らせてあるものに
ばかり引き寄せられる。

フルーツを買った時についてくる小さな
保冷材で腕やおでこや首の後ろを冷やすのに
たちまちそれはぬるくなってゆくのがわかる。

体温計でじぶんの体温を確かめる前に
氷の溶け方で体温計の数字らしきものが
浮かんできて、やっぱりまぎれもなく
発熱しているのだと確信する。

めまいや熱はからだが成長しようとしている
証なのだと聞いたことがある。
そんなこと誰か体操の先生が云ってたなと
うつろに思い出しながら成長ってなによって思った。
たぶん成長するって新しいステージへと身を
まかせることだろうからそれとひきかえに
いっぱいなにかを捨ててるっていうこと
なのかもしれないなって思った。

身体の外っ側に放熱することで、過去のことは
置いていくみたいな。

勝ちとか負けとかじゃないんだとは思うのだけれど
風邪をひいた朝のあのどよんとした喉元あたりには
いっつも今日は負けたなって感じてしまう。
風邪に勝ってみてもどうってことないようなことなの
だけれど。
からだに熱を携えているとそんなちっちゃなことに
敏感になっているじぶんに気づく。

       
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