その三一一

 

 






 






 






























 























 

かきわける 微熱のこころで なまえをよんで

ち点と点をずっとたどってたどって。
ときおりながいながい点にであいがしらして
これは、もう実線なのかなっておもったら
それはすこしだけ こきゅうのずれた点だったりして。
点と点はつづいてゆく。

その点の上にたって、つぎの点へと石段を飛ぶように
飛んでみる。
ふくらはぎから腰、背中のあたりにとてもやわらなか
ばねがそなわっていることを
すこしだけ信じて。
それをなんどもなんども繰りかえす。

あの点のむこうのほうにとてもだいじなものが
待っている気がして、そこまでたどりつくまで
跳躍をつづけようとおもいながら。
だいじなものって こころのなかで言葉が響く。
だいじなものって・・・。

点と点をふりかえりながら、ちゃんとなにかを
伝えただろうかって。
伝えることにどれだけ、労をおしまなかっただろうって。
よくわからないから しゃがんでしまいたくなる。

このあいだ少し前の雑誌をぱらぱらめくりながら
青い文字のタイトルの詩に  ぱちぱちとしずかな
火花がどこかにちってゆくような思いにかられた。

大好きなクリエイティブ・ディレクターが選んでいた
八木重吉の「心 よ」っていう詩。

<こころよ では いっておいで>
で はじまるひらがなの詩。
おしましいも
<こころよ では行っておいで>
で 閉じられている。

さいしょはひらがなだったのにさいごは
ちゃんと漢字になっているところが
なんかもうにどと、もどってこないものの
背中をみおくっているみたいでほんとうに
しとしとした気持ちになってきた。

そしてこの詩が好きだという思いの縁のような
ところをなんとくなぞっているようなこころもちに
なってきて、どうしようもないこころに
とりかこまれてしまった。

いつまでもそのページのなかにすっぽりつつまれて
いたいような。
八木重吉の詩につかまれてしまったのか
その大好きな選者の視線に、とりこになって
しまったのかわからないような。

でもふいにこれはたぶん、きっとたぶん
宛先のないきもちのようなものなんだろうと
<せつない>が持っているちからみたいなものを
感じていた。

       
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