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メ
レ
ン
ゲ
の
か
た
ち
の
し
た
に
眠
る
春
の
夜
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ゆきのはら つもることばの 種をかくして
浮かぶ。道がない。ひとりとひとり。
もののかたちにうかんでいたゆきが、そのものの輪郭をけしてゆくほど、隆起して。
もしかしたら、ほのかにすきだったのにその白の静かな残酷さにうちのめされて、不安になってゆく。
きもち。ゆめのようにきえてゆく。
こころ。よくわからなくて、わからないじょうたいをわかりたいという欲求もきえて。
無垢であるということは、ひそかに暴力的であることを
思い知りながら。
PR誌の切り抜きをみている。「呪い」と「祈り」という
タイトルの書評を読む。
カリブ音楽のパンク、<メレンゲ>についての冒頭。
メレンゲということばから、あの卵白の泡立てたときの
白い塊を思い出す。
冬のイメージから、離れようとして読み始めたのにその語感からすぐにまた、しろの不穏さに出会ってしまう。
その出会い頭の偶然にうろたえながら、ドミニカという国についての描写を、呼吸する。
太陽の下のメレンゲのリズム。
様々な国に支配され続けた歴史を背負ったドミニカ。
故郷を捨ててどこかへ移住していても人々は、<いずれまた、
ドミニカに帰ってくる>と。
その先の文章を読んでいた時、ふたたび、忘れようとしていた時間に引き戻された。
<いつだって、ドミニカが追いすがり、>
<足もとの土地があれよあれよとドミニカ化し、ゆらぎ、
ひびわれ、気がついたら、ぐじゅぐじゅにぬかるんで、とても立っていることができない>
行ったことのない、海を纏った暑い国への自暴自棄な憧れにもにたきもちが、たちまちまたしろいせかいへと引きずり込まれる。
こうやって、ひとはあったことのないひととの文章とも
さだめられたかのように、出会ってしまうものなのだと思う。
思いにふたをしていても、そのこみあげる水圧に似た力で押し上げられて、あふれでたものと共におぼれそうにただよいながら、もとの気持ちから逃れられないものなのかもしれない。
ゆきずりの。一瞬のえにしにとりかこまれながら、しろくまうもののなかに、なにもかもがちいさく浮かんで。
しんしんと、ゆめもうつつも、つもってゆく。 |