その四五七 |
|||
ぬ |
ひしめきの 雑踏のなか ふいにつつまれて うまくいえないけれど、その時わたしはその富士山をひとりで見ているような気がしなくて。 去年大好きだった人を失って、わたしははじめて初七日や四十九日というものを体感したような気がする。そういう時間はどれほど生きている人達にとって大切なものなのか。今までも誰かの死に出会うことはあったけれど、そこまで感じ得たことはなかったと思う。 日常は送りつつひとりになると、人が死ぬとはどういうことなのかを知りたくてあらゆる本を、なにか答えを探すかのように読み耽っていた。 あの日、富士山をみていたときわたしだけの視線ではなくて、それはかつて生きていたKさんの視線も重なり合うようにみていたような気がしてならない。 |
||