その四九四 |
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みちのうえ みちをはずれて 左折するとき もうすでにそのときを知ってしまったわたしは、その日付がいつだか知っているから、そのページ以前にだけ目をふれるようにしてページをめくる。 過去のものを紐解く行為は、例えば映画の結末を知らされている観客が、まだ見ぬ時間を過ごしている登場人物になにか予期せぬことを回避するために、その道は通らないでと伝えてあげたいと思うことに似てるのかもしれない。 ふしぎな感覚におちいりながら、やっぱりその日のページを開く。 それが暗示なのかなになのかはわからないけれど。たぶん、天国というキーワードがどこかじぶんの中でくすぶっていて、記しておきたいと思ったのかもしれない。 そしてその日がやってきて、空白のページがいくつか続く。その日とパリの同時多発テロの日がおなじだったこともあって、あの事件で、妻を失われたアントワーヌ・レリスさんの言葉に続いて、ドラマや映画の中の死に対する台詞が書き写されていた。 |
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