その五〇五

 

 






 






 






















































































 

まやかしの 映像の虹 さがしつづける

 困ってる時に駆け付けてくれる人。ってそんな人なんているの? って思いながらも、こころのどこかであこがれに近いものがあって。
 この間、おおきな蜘蛛が台所に出現した時も、一瞬はそんなことがよぎったけど。
 やっぱり、見たとたんにじぶんでなんとかするしかないなって、なってしまう。
 で、なんとかなってしまうのだけど。

 10月の週末。とある会ですてきな女子の方たちと喋っていて、となりにご一緒させていただいた方が、クラフト・エヴィング商会の画と、小説が好きなんです。
って話を聞いて、そういえばわたしも好きなことがあったなって、久しぶりにページをめくる。

 主人公はエリアシという男子とアヤトリという女子のおさななじみのふたり。
 彼らの小説のなかの名前って、むかしから思っていたけれど。地球儀には記されていないどこかの国に存在している人たちみたいに、ふしぎなきもちになる。
 できごとは今の東京のどこかのようなのに。

アヤトリが真夜中、苺ジャムの壜のふたが開かなくて、「困ったことになったの」って理由は言わずに、エリアシを呼び出す一節を読んでいて。
 ほら、小説の中では困った人がいると、ちゃんと駆けつけてくれるひとがいるんだよねって、なかば羨望ににた思いに駆られてゆく。
 だからこれは小説だってって思いながらも。
 でもエリアシは「またかよ」って言いながらもその壜のふたを開けたり開けられなかったりするんだよって、じぶんの中でたたみかける。
 さいきん掌の中に乗るような小説が好きになってよく読むようになった。
 そうはいっても。どこかの街の片隅で生きてるんだよ、彼や彼女は。ってそんな物語に出会えると、ときどきうれしくなる。

       
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