その六三〇

 

 






 







 









 

きもちって いつかどこかに 行ってしまうから

どれだけ謝罪しても許されないってこと
あるんだなって。
そんなことを経験した。

謝ればいいっていう態度じゃなかったつもり
だったけれど。
その人の憤りは収まらなかったみたいで。

生きてるとほんとうにやらかしてしまうこと
多いなって。

もう桜は散ってしまったけれど。

いつだったか4月の始まり頃に、

<夜 さくらは天に向かって散っていく>
<じつにわずかな時だが、さくらのはなびらは
わたしたちの足もとを、どこにもない光でてらす>

そんな詩にであった。

それを日記帳に書き記していた時はまだあやまちの
前だったので、違う気持ちでそれを書き留めたのだろう。

今になってみると、ちがうアングルでその詩の言葉が
わたしの心を撫でてゆく。

散ってしまった桜を知っているのに。

ここには新しい、形もおぼろげなのに、季節外れの
桜が咲いてくれたようなそんな気持ちで詩を読んでいた。

ことばに傷つけられたと感じる時、それを労わってくれる
のもやはり言葉なんだなって思いながら。

ここに訪れてくれた方がそんな気持ちになって
くださる方がひとりでもいらっしゃったら
とても幸せです。

 





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