その六六二

 

 




 





 







 

人気とは 人の気配だと 教えてくれた

たとえば、
自分よりも遥かに先にいらっしゃる
仕事をされているかたの、今までの
道のりを称える場面っていろいろ
あるけれど。

同じ職種であれば、あるほど。
じぶんは、まだまだだと思うシーンって
よくある。

その方は、わたしが出たり入ったりした
広告の世界で30年も働いていらっしゃった
トップランナーの方。
密かにそのお仕事ぶりに憧れている、
アートディレクターの方だ。

後輩の方が、仕事をはじめてから30年に
なった彼に祝福のメッセージを寄せて
いらっしゃった。

じぶんの仕事はまだまだですから
という意味のことを仰った。
後輩の方も作品を通してだけだけど、
存じ上げている。

人のよい面を写真作品で照らし出すことで
わたしたち読者が気がつかなかったことの、
人の営みを気づかせてくれるそんな視点を
持った方だった。

写真を撮っていらっしゃる後輩の彼が
自分の仕事は消費されるだけで、なにも
残っていないですからと、つぶやいていた。
その言葉を受けた、わたしの憧れの方の
お返事を目で追った。

その文字一つずつに、雷に打たれたみたいに
しびれていた。

世の中になにも残らない仕事なんてないと
いうこと。

ほんとうに君がそう思っているなら、君がいつも
書いている素晴らしい人たちのことを自分で否定
することになる。

この言葉を知った頃、じぶん自身、現在の仕事の
ことだけで過去まで、否定したい気持ちに
なりそうになっていた。

現在のわたしを否定することをなにも、やれて
こなかったと、否定することは自分だけじゃ
なくて、仕事で出会った人々とのよかったこと
うれしいこと泣笑いを含めてすべてをダメだった
ことに葬ることなのだと知った。



TOP