その弐

















 

バスの車窓からいつも見かける、ちいさなフラワーショップ。
夕陽に照らされてる切り花は、きれいなおねえさんたちに
まっすぐに見初められて、彼女達と帰ってゆく。
そんなまぶしくて、原色の風景が目に映ると
わたしは、いつもその距離感を保ちたい誘惑に駆られる。

アラーキーが撮る花の写真が大好きだ。
それも思いっきりよれよれで、とびっきりしわしわの
ぜったいフラワーショップには並びそうに無い花たちが。
お茶の水博士のようなキュートなあのヘアスタイルで
やさしく撃ちのめすようにシャッターを切っていた彼を
テレビでみかけた。
墓前に手向けられていた枯れ心地のよさそうな花束ばかり。

たちまちわたしは気持がどんどんその被写体に
馴染んでゆくことに気づいた。
輝きを失わない生気にみなぎった花々はいつもどこか
よそよそしくて遠い。
だから乾いた花びらを愛でる癖がいつまでたっても治らない。
真夜中のテーブルの上にいつのまにか落ちてる
こよなく時を重ねたそれをみつけたときは
なぜかずっとめぐりあいたかった好みの男の人と
思いがけず出会ってしまったときみたいに
安堵してうれしくなるのだ、いつだって。

       
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