その二八





 






 







 

てのひらが スローモーション つぶやくように

3月某日 雲一つない空の下より
じゃんけんぽんみたいなかんじで誰かと出会う。
おあいこばっかしで、真似しないでよとおもいつつ
笑いがこみあげてきて、かなしくないのに涙がでてきて。

違います。涙はでませんが、もぅとかちょっと!とか
そういうすこしばかし反抗めいたことばが口をついて
でます。そういう時は。

じゃんけんぽんはほんとは昔からよわっちいのに
したがるのが悪い癖で。
どんどん挑みかけるわけです。
てのひらを石にしたりハサミにしたり紙にしたり。
どっちかが負けてどっちかが勝つだけでそれで世界が
あっちにいってしまうなんてことはないのに
でも勝ちたいわけです。

3回戦? 5回戦? と始まるわけですが。
それがどういう風のしわざか
いつのまにかひっきりなしにおあいこが続いたとしたら。
どうします?
わたしは永遠にじゃんけんをするでしょう。
だって勝負がついたらもうその人のげんこつだって
父のようにすっくとのびる指だって、
だしおしみしているみたいな、ピースサインみたいなかたちだって
二度とみられないわけですから。

いつまでもおあいこで。
よくしくみのわからない以心伝心のようなもので
わたしの次だす指のかたちが、ばれ続けていたら
いいなぁと思います。
気を遣ってわたしを勝たせたりしないでください。
でも負けるのもヤですから、どうぞそこんとこは
おあいこで。

ところできょうのわたしはほんとうのところ
勝っていますか?負けていますか?

       
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