その三五








 






 









 

手探りで しずかに辿る 声のする場所 

いまここにある世界は、りあるでもあるしばーちゃるでもある。
もうそういったものが入り組んでしまっていて、
どこからどこがと境界線は引けないようなしくみになっている。

マイナスとマイナスをかけ合わせるとプラスになるように
ばーちゃるがずっと続けばりあるなかんじに
なるのかな?
と思わせようとするありとあらゆる空間に取り込まれてる日々。

一枚のサックスのCDを毎夜聞いている。
どうしてそれを耳にするたびにいつも同じ映像が浮かぶんだろう。

会話していたときの呼吸や濃密な間や
誰かの笑い声や眠る姿や、堪えきれないなみだや。

景色はいつも変わらず浮き彫りにされて
それをなくしてしまいたくないからわたしは
トラックリピートに設定したまま
ずっと眠る前まで聞き続ける。

それはきっといまという時間ではないから
すでにばーちゃるなことかもしれない。
でもわたしにとってはいちばんじぶんの深い場所に
刺さってくるとてもりあるなことなのだ。

かさぶたをむりにはがして血をにじませたくなるぐらい
還ってゆきたい場所なのだ。

もうすでにいまじゃないのに、色も匂いも体温も
ゆるぎなくいまここにあること。
そして、そこにいたみんなのことを、こよなく想い続けることが
とてつもなくわたしにとっての、<りあるわーるど>だと
このごろ痛いぐらいに気がついている。

       
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